2006.12.26 Tuesday
お引越し
| - | 19:55 | comments(21) | - |
人間に花は創れない
あれは、十一月の終わり、紅葉もすぎたさびしい季節であった。花を写生にきたのに、もう花らしい花はすでになかった。やぶの中でヤブコウジの赤い実を見つけたので、写真にとろうと思ってカメラをのぞいてみたら、いちだんと美しく思われた。黄色いものがあったら、もっときれいになるだろう。などと思うのは、絵かきの悪いくせで、そのカメラの中の構図をいちだんともっともらしくするために、黄色く色づいたツルクサをあしらってみた。予想に反してカメラの中の世界は一変した。きれいにはなったが、決して美しくはなかった。それは自然ではなく、人間が加筆訂正したうその世界が出現したにすぎなかった。
カメラがのぞく一メートルに満たぬ世界にも、自然の秩序というものがあったのである。木の枝は自然のままにのび、つるがからまり、枯葉や雑草が、解きがたいほどに折り重なっているのだが、ひとつとして自然のおきてに背くものはなかった。私の持ってきた黄色い葉は、どのように置きかえてみても、その世界になじまぬばかりか、後悔してその葉をもういちどとりのぞいたあとにも、ふたたび、あの美しい世界はかえってこなかった。
